デザインデータを納品するときは、完成した画像を送れば終わりとは限りません。依頼者がそのまま掲載したいのか、印刷会社へ渡したいのか、後から文字を編集したいのかで、必要な形式と引き渡す範囲が変わります。まず用途と契約を確認し、その用途で実際に使える状態にして渡すことが大切です。
この記事は、バナー、ロゴ、チラシ、資料などの制作を受託した個人のデザイナー向けに、納品物の決め方、ファイル形式、編集用データ、素材とフォント、点検、受領確認までの手順をまとめたものです。特定のソフトをすべて使う必要はありません。使っている制作環境と依頼先の条件に合わせて読み替えてください。
元データを必ず無料で渡す、あるいは絶対に渡さないという一律の結論は出せません。合意した納品範囲、権利、第三者素材の条件を確認して判断します。以下のファイル名、案件、数量、文面は説明用の架空例です。公式資料の確認日は2026年10月4日で、ソフトの操作や利用条件は変更されることがあります。
納品データの範囲を契約と用途から決める

「データが欲しい」の目的を具体的に聞く
依頼者から「データもください」と言われたとき、先に拡張子を選ぶより、受け取った後に何をするかを聞きましょう。Webページへ画像として載せるだけなら、制作中のレイヤーまで必要とは限りません。社内担当者が毎月価格を変えるなら、編集できる部分と操作環境の確認が必要です。
印刷物の増刷を別の印刷会社へ依頼したい場合も、必ず編集用の元データが必要とは限りません。その会社が受け付ける仕様のPDFなどで足りるかを確認できます。一方、内容や版面を大きく変更する予定なら、完成PDFを渡すだけでは依頼者の目的を満たせないことがあります。
質問は「何形式にしますか」だけで終わらせず、「誰が、どのソフトで、何を変更し、どこへ使いますか」と分けると具体的になります。依頼者が形式を知らなくても、用途は説明できる場合があります。その答えを基に、納品物と作業範囲を提案しましょう。
完成データと編集用データを一覧にする
完成データは、そのまま掲載や印刷などに使うために書き出したファイルです。編集用データは、文字、配置、図形などを制作ソフトで修正できる状態のファイルを指すことが多いものの、編集できる範囲は作り方で変わります。言葉だけで合意せず、含めるものを列挙します。
架空のバナー制作なら、「掲載用PNGを三サイズ、確認用PDFを一つ、編集用ファイルは含まない」と書けます。編集用も渡すなら、「使用ソフトと版、テキスト編集の可否、リンク画像、使用フォント一覧、操作説明の有無」まで確認すると、受領後の疑問を減らせます。
採用案と不採用案、制作途中のラフ、作業用メモ、撮影前の素材なども分けてください。完成版を納品する契約だからといって、作業フォルダの全内容を送る必要があるとは限りません。逆に、契約で引き渡すと決めた資料を、作業用だからという理由だけで除外しないようにします。
※表は横にスクロールできます。
| 区分 | 何を渡すかの例 | 先に決めること |
|---|---|---|
| 掲載用の完成データ | 指定寸法のPNGやJPEG | 寸法・容量・背景・色・点数 |
| 印刷用の完成データ | 指定仕様で書き出したPDF | 印刷会社・商品・塗り足し・ページ順 |
| 編集用データ | 合意した制作ソフトのファイル | 編集範囲・対応版・素材・フォント |
| 確認用データ | 完成見本のPDFや画像 | 確認用と本番用の見分け方 |
| 引き継ぎ資料 | ファイル一覧・使用条件・操作メモ | 担当範囲・問い合わせ先・保管条件 |
見積もりと追加依頼の境界を合わせる
制作開始時には掲載画像だけを予定していたのに、納品直前に「文字を変更できるテンプレートも欲しい」と言われることがあります。元の制作データを渡せば対応できるのか、編集しやすい構造への整理や素材の差し替えが必要なのかを確認してください。追加の作業があるなら、その内容を説明します。
追加料金を提案するときも、「元データ代」という一言だけでは相手が判断しにくくなります。編集用の整理、対応版への変換、ライセンスの確認、利用説明など、何をするための費用かを示しましょう。既に合意済みの納品物を後から有料に変えることとは区別が必要です。
料金と日程に合意する前に、依頼者の急ぎに合わせて範囲を広げ続けると、どこまでが当初の仕事か分からなくなります。「今回の契約に含む内容」と「追加で相談する内容」を同じメッセージへ整理し、確認を受けてから進めると、双方の認識をそろえやすくなります。
ファイルの受け渡しと権利の扱いを分ける
編集できるファイルを渡すことと、著作権を譲渡することは同じではありません。また、依頼者に一定範囲の利用を認める場合も、その範囲がデータの形式だけで決まるわけではありません。文化庁の文化芸術分野の契約に関するQ&Aなどを参考に、納品と権利を別々に整理してください。
たとえば、社内で価格だけを変更して使うことを認めるのか、別の制作者へ渡して大きく改変することも想定するのかで、話し合う内容が変わります。どの媒体で誰が使えるか、第三者への再配布をどう扱うか、制作実績として公開できるかも、必要な範囲で確認します。
法律上の結論は契約や個別事情で変わります。データを渡す義務の有無や既に起きた紛争を、一般的な記事だけで判断しないでください。まず契約書、発注書、見積書、やりとりを集め、疑問が残る場合は専門家へ相談します。受託全体の確認には業務委託契約のチェック項目も使えます。
納品先の環境と確認担当者を決める
同じ会社でも、依頼窓口、内容を確認する人、サイトへ掲載する人、印刷を発注する人が別の場合があります。窓口の人がファイルを開けたことだけで、実際の使用環境に問題がないとは言い切れません。誰がどの範囲を確認するかを、納品前に共有しておきましょう。
使用ソフトの名前だけでなく、バージョン、端末、共有サービスの利用制限も聞きます。会社のセキュリティ設定で外部のファイル便を開けないことや、添付できる容量が決まっていることもあります。納品当日に初めて分かるより、少量の確認用ファイルで受け渡しを試す方が対応しやすくなります。
確認期限と問題があったときの連絡先も必要です。担当者の休暇や社内確認の時間を考え、制作締切と最終使用日を同じ日にしないよう相談します。納品条件が決まったら、関係者が同じ一覧を見られる形で残し、途中の変更もその一覧へ反映してください。
用途に合うファイル形式を選ぶ

掲載画像は寸法・背景・容量から選ぶ
Web用の画像では、まず掲載先が指定するピクセル寸法、縦横比、ファイル形式、容量を確認します。写真が中心なのか、透明な背景が必要なのか、細い文字や線が多いのかで、候補は変わります。高画質という言葉だけでは、どの状態を求めているか一致しません。
JPEGは写真などで使われる形式で、圧縮による画質の変化があります。PNGは透明部分を保持できるため、背景を透過させたい画像などで候補になります。Adobeのアートワーク書き出し資料では、形式ごとの特徴と設定が案内されています。利用先が対応する形式から選んでください。
書き出し後は、想定する背景色へ重ねて輪郭を確認します。白い画面では気付かなかった白縁が、濃い背景で目立つことがあります。容量を小さくした場合も、ロゴや細い文字がにじんでいないかを見ます。必要な品質と掲載先の条件を満たす最小限のファイルを目指しましょう。
ロゴや図形は拡大用途と構成要素を確認する
ロゴや単純な図形では、ベクターデータが必要になることがあります。ベクターの図形は線や曲線の情報で表されるため、拡大する用途に向く場面があります。ただし、拡張子がAIやSVGだからといって、含まれるものがすべてベクターとは限りません。写真や画像化された効果が混在する場合があります。
Adobeのグラフィック形式の説明は、ベクターとビットマップの違いを整理しています。納品時はファイル名だけでなく、どの部分が編集でき、拡大時にどの部分を確認すべきかも伝えると親切です。画像を単に別形式で保存しただけで、精細なベクターへ変わるわけではありません。
WebでSVGを使う場合も、掲載先の対応や運用上の制限を確認します。SVGを受け付けない管理画面や、担当者がその形式を扱わない運用もあります。必要に応じて表示用のPNGと編集・展開用のデータを分け、何をどこへ使うかを説明して渡しましょう。
PDFは閲覧用と印刷用を混同しない
PDFは複数ページの資料や完成見本の共有に便利ですが、同じPDFという名前でも設定は異なります。メールで見てもらう軽い閲覧用と、印刷会社へ入稿するファイルでは、画像の品質、塗り足し、色、規格などの要求が変わることがあります。
印刷用は、発注する会社と商品が決まってから、その入稿仕様に合わせて用意します。「PDFならどこでも同じように印刷できる」と案内しないでください。印刷会社を変えた場合は、元の仕様との違いを確認する必要があります。細かな印刷データの作り方と、納品ファイルの整理は別の作業として扱います。
AdobeのPDF作成資料でも、PDF/Xやレイヤーを持つPDFなどの種類が示されています。確認用PDFに編集情報が残る設定を使っていないかも点検しましょう。見せたい内容と必要な用途に合わせ、保存方法とプリセットを選ぶことが大切です。
編集用は「開ける」と「同じように編集できる」を分ける
依頼者が制作ソフトを持っていても、同じデータを完全に再現できるとは限りません。異なる版で新しい機能が使えない、別ソフトで文字組みが変わる、効果が画像化されるなどの可能性があります。編集用データを納めるときは、使用したアプリ名と版を記録します。
相手の環境へ合わせて古い形式に保存する場合は、変換後のファイルを開いて見た目と編集状態を確認してください。元のファイルまで上書きしてしまうと、機能が失われた状態しか残らない場合があります。制作マスターと納品用の複製を分け、変換した版を明記する運用にします。
「テキストを変更できます」と案内するなら、実際に必要な文字部分が編集可能か、フォントを相手が利用できるかも確認します。一部をアウトライン化したファイルを、すべて文字入力で修正できるものとして渡さないことが重要です。編集できない部分は、先に知らせておきましょう。
用途別のファイルを増やしすぎない
心配だからとすべての形式を書き出すと、依頼者はどれを使えばよいか分からなくなります。似たファイル名が大量に並ぶほど、古い版や用途の違うデータを選ぶ可能性も高くなります。必要な用途に対応する最小限の組み合わせを、説明付きで渡す方が扱いやすくなります。
架空のロゴ納品なら、Web用の透過PNG、白背景用のJPEG、合意したベクター形式、使い方の説明を分ける方法があります。ただし、この組み合わせが全案件の標準という意味ではありません。印刷、刺しゅう、看板など、実際の使用先から必要な形式を確認してください。
※表は横にスクロールできます。
| 用途 | 形式を決めるときの確認 | 納品時の説明例 |
|---|---|---|
| Web掲載 | 寸法・容量・透明背景・対応形式 | このPNGは暗い背景でも使う透過版 |
| 資料の閲覧 | ページ順・容量・リンク・文字の表示 | このPDFは画面確認用で印刷入稿用ではない |
| 印刷発注 | 商品ごとの入稿仕様・色・塗り足し | 指定した印刷会社の商品条件で作成した版 |
| 社内での編集 | アプリ・版・フォント・編集範囲 | 価格欄は文字編集可能、ロゴは固定 |
| 別の制作者への引継ぎ | 契約・第三者素材・構造・説明 | 利用可能な素材と別途取得が必要なものを区別 |
形式名の一覧より、依頼者の行動と結び付いた説明を優先します。印刷する人、掲載する人、修正する人が別でも、この一覧を見て適切なファイルを選べる状態を目指しましょう。
編集用データと素材・フォントを整理する

不要な作業情報を納品用の複製から取り除く
編集用ファイルには、非表示のレイヤー、採用されなかった案、依頼者の内部メモ、仮の価格などが残っていることがあります。画面に見えていないから相手へ渡らないとは限りません。納品用の複製を作り、不要なオブジェクトや情報が含まれていないかを点検してください。
ただし、見えないものを一括で削除すると、後から必要になる構造まで壊すおそれがあります。印刷や書き出しに必要な設定、編集に使う部品、合意した別案などは残す場合があります。削除する前に、何のための要素かを確認し、制作マスターは別に保存します。
レイヤー名も、受け取る人が理解できるものへ整理します。「レイヤー1のコピー3」だけでは、どの部分を変えてよいか分かりません。背景、見出し、価格、写真など、機能が分かる名前にすると引き継ぎやすくなります。コメントに個人的な評価や機密情報が残っていないかも見てください。
リンク画像と埋め込み画像の状態を点検する
制作ファイルが外部の画像を参照している場合、その画像が納品フォルダに含まれていないと、相手の環境で表示や編集に支障が出ることがあります。自分のパソコンでは元の保存先を参照できるため、問題に気付かないことがあります。リンク切れや更新待ちの表示を確認します。
Illustratorのリンク管理資料では、見つからないリンクの再設定や、リンクと埋め込みの違いが説明されています。埋め込めばすべて解決するという話ではなく、ファイル容量、更新方法、素材の利用条件を含めて方法を選びましょう。
納品用フォルダだけを別の場所へ複製し、その中のファイルを開いてみると、元の作業場所へ依存しているリンクを見つけやすくなります。可能なら相手に近い環境でも確認します。リンク画像を渡せない条件がある場合は、隠して省略するのではなく、差し替えや別途取得の方法を相談してください。
フォントファイルを無条件に同梱しない
編集用データで使ったフォントを、依頼者もそのまま使えるとは限りません。自分に認められた利用と、フォントファイルを別の人へ渡す行為は、ライセンス上で別に扱われることがあります。フォントが不足していると言われても、手元のファイルをそのまま送る前に条件を確認します。
Adobe Fontsでは、適切に埋め込まれた文書や画像を渡す場合と、顧客がフォントへアクセスして直接編集する場合を区別しています。後者では顧客側のライセンスが必要です。また、フォントをパッケージに含めて他の人へ渡すことは認められていません。詳しくはAdobe FontsのライセンスFAQを確認してください。
納品には、使用したフォント名、太さ、入手先、相手側で必要な確認をまとめた一覧を付ける方法があります。他社フォントも、それぞれの条件で判断します。アウトライン化は文字を図形へ変える方法の一つですが、それによってあらゆる利用規約を回避できるわけではありません。
写真やイラストの第三者素材を区別する
デザイン全体を自分で組んでいても、写真、アイコン、イラスト、テンプレートなどに第三者の権利が含まれることがあります。完成したデザインでの利用が認められていても、素材単体を取り出せる状態で再配布できるとは限りません。編集用データに含める前に、素材ごとの条件を確認してください。
素材一覧には、どこで取得した何という素材か、誰がライセンスを取得したか、どの案件に使ったかを記録します。依頼者から支給された素材も、必要な利用範囲を確認する対象です。依頼者が送ってきたという事実だけで、第三者へ再配布してよいとは判断しないようにします。
条件が合わない場合は、依頼者に別途取得してもらう、受け渡し可能な素材へ差し替える、完成画像だけを納品するなどの案を検討します。追加費用や見た目の変更があるなら、先に説明して合意を得ます。納品後に相手が素材不足へ気付く流れを避けましょう。
パッケージ機能を使った後も中身を確認する
制作ソフトのパッケージ機能は、関連ファイルをまとめるときに役立ちます。ただし、ボタンを押せば、契約上渡してよいものだけが自動で選ばれるわけではありません。含める対象と除外する対象は、制作者が確認する必要があります。
Illustratorのパッケージ機能では、リンクの収集やレポート作成などが案内されています。フォントのコピーには許可の確認が必要とされ、日本語などのフォントは収集対象に制限があります。ソフトの機能としてできることと、配布の許可があることを混同しないでください。
完成したフォルダを開き、意図しないファイルが混ざっていないか、リンクが納品先の構成を参照しているか、必要な説明があるかを点検します。レポートが出た場合は、存在するだけで安心せず、見つからない素材やフォントの記載を読み、対応済みかを確認しましょう。
書き出し後の点検と納品フォルダを作る

制作画面ではなく書き出したファイルを開く
制作ソフトの画面で問題がなくても、書き出したファイルで文字が欠ける、画像が粗くなる、背景が変わる、範囲がずれることがあります。納品前には、送る予定のファイルそのものを開いて確認します。書き出し操作が成功した表示だけでは、内容の確認にはなりません。
確認は、全体の見た目と細部を分けて行います。全体ではページやアートボードの数、順序、余白、画像の位置を見ます。細部では文字、数値、細い線、透過部分、画像の輪郭を確認します。完成見本と見比べる場合は、同じ版を基準にしてください。
ファイルによっては、表示するアプリで見え方が変わることもあります。相手が使う予定のソフトや閲覧方法が分かっているなら、その条件に近い環境で確認します。すべての環境での完全な一致を約束するのではなく、確認した環境と、残る注意点を必要に応じて伝えましょう。
文字・数値・リンクはデザインと別に確認する
デザインの美しさを見ていると、電話番号の一桁や価格の単位などを見落とすことがあります。文字と数値は、元原稿や依頼者が承認した情報に照らして、意識的に別の確認を行ってください。見覚えがあるから正しいと思い込まないことが大切です。
名前、日付、営業時間、住所、価格、単位、注意事項を順に点検します。リンクや二次元コードを入れた場合は、実際に正しい行き先へ進めるかを確認します。見た目が似た別ページや、テスト用のURLが残っていないかも見ます。アクセス制限があるリンクは、許可された範囲で確認してください。
依頼者から後で届いた修正が、すべてのサイズへ反映されているかも重要です。正方形版だけ価格を更新し、横長版に旧価格が残るといった漏れは、ファイルごとの修正一覧で防ぎやすくなります。複数形式を納品する場合は、変更点の確認を形式ごとに行いましょう。
ファイル名に案件・用途・版を入れる
ファイル名は、受け取った人が用途と新旧を見分けるための案内です。「完成」「最終」「本当の最終」と似た名前を増やすより、案件名、用途、サイズ、版などを一定の順で付ける方が管理しやすくなります。依頼先の命名規則があるなら、そちらを優先します。
架空の例では「shopA_banner_web_1200x630_v03.png」のように、どの案件の何用かが分かる形にできます。日本語ファイル名を禁止するという意味ではありません。相手のシステムで扱える文字や長さに合わせて、伝送時に文字化けや省略が起きないかを確認します。
ファイル名に顧客の個人情報や未公開の商品名を必要以上に入れないことも大切です。共有画面や通知メールで名前が見える場合があります。内容を見分けられる識別名を使い、詳細は適切に管理された説明資料で補う方法も検討してください。
本番用と確認用をフォルダで分ける
同じ場所に確認用画像と本番用ファイルが並ぶと、担当者が間違った方を使うおそれがあります。納品フォルダの構造は深くしすぎず、本番用、編集用、説明用などの区分が一目で分かるようにします。不要な旧版は納品セットへ入れないことが基本です。
たとえば「01_掲載用」「02_編集用」「03_説明資料」のような構成なら、用途を分けられます。編集用を納品しない契約では、そのフォルダ自体は不要です。フォルダ名だけでなく、説明文にも「掲載には01を使ってください」と書くと、初めて受け取る人にも伝わります。
ZIPへまとめる場合は、圧縮後のファイルを別の場所で展開し、点数と中身を確認します。圧縮前のフォルダが正しくても、送るZIPが古い版という可能性があります。実際に送信する一つのファイルを基準に、最後の確認を行いましょう。
短い引き継ぎメモを添える
引き継ぎメモは長い説明書である必要はありません。納品物の一覧、各ファイルの用途、制作環境、編集時の注意、素材やフォントの条件、確認してほしいことを短くまとめます。専門用語だけでなく、相手が何をすればよいかが分かる文章にしてください。
架空の例なら、「掲載用フォルダに三サイズのPNGを入れています。背景は透過です。編集用ファイルは今回の納品対象に含みません。画像内の価格とリンク先をご確認ください」と書けます。相手が印刷に使いたい場合は、Web用画像から転用せず、印刷条件を知らせてもらう案内を添えます。
操作説明を含む契約なら、どの箇所を編集できるかを示した簡単な見本も役立ちます。ただし、説明資料へ実際のパスワードや秘密のアクセス情報を埋め込まないようにします。説明と認証情報は、依頼先の安全な運用に従って扱ってください。
受け渡し・受領確認・更新対応を整える

合意した共有方法で必要な相手へ届ける
ファイルを送る方法は、依頼先や利用している受注サービスのルールに合わせます。メール添付、指定のストレージ、案件管理画面など、合意した場所を使ってください。普段使いやすいサービスだからと、機密データを無断で別の場所へ移さないことが大切です。
共有リンクを使う場合は、公開範囲、編集権限、ダウンロードの可否、期限を確認します。確認だけの相手へ編集権限まで渡す必要があるか、リンクを知っている人全員が見られる設定でよいかを点検してください。契約や社内ルールがある場合は、その条件を優先します。
送信前には宛先と添付内容を確認します。以前の案件の相手へ送る、似た名前の別フォルダを添付するなどの間違いを防ぐため、納品物一覧と照らす工程を入れます。受け渡しが済んだ日時と送った版を記録しておくと、後から状況を整理しやすくなります。
納品メッセージに確認事項と期限を添える
納品の連絡では、何を渡したか、どこから取得するか、どの版か、何を確認してほしいかを明記します。「できました」の一言だけでは、確認用なのか正式な納品なのかも分かりません。利用しているサービスに所定の納品操作がある場合は、その操作も忘れずに行います。
説明用の文面なら、「合意した三サイズの掲載用データを納品します。一覧に記載した六ファイルを保存し、表示、文字、価格をご確認ください。修正点はファイル名と該当箇所をまとめてお知らせください」と整理できます。数量や確認項目は、実際の案件へ合わせて変更してください。
確認期限を設ける場合は、一方的に短く指定するより契約や事前の合意に合わせます。相手の確認が遅れたときに自動的にすべて承認されたことになるかは、契約条件によります。一般的な納品メールだけで、その効果が生まれると考えないでください。
受信・開封・検収を同じ意味にしない
ファイルを送信できた、ダウンロードされた、正常に開けた、内容が承認されたという状態は、それぞれ異なります。相手から「受け取りました」と返事があっても、内容の確認が終わったとは限りません。どの段階にいるかが分かるように、連絡の言葉を整理します。
まず、必要なファイルがすべて届いて開けるかを確認してもらいます。その後、契約で決めた確認項目に沿って内容を見てもらい、修正点があれば具体的に受け取ります。表示不具合なのか、元原稿の変更なのか、追加のデザイン要望なのかで、対応の範囲は変わります。
プラットフォームを利用している場合は、メールやチャットの返事だけでなく、そのサービス上の検収や正式な納品手続きも確認してください。独自にサービス外で精算や連絡を進めると、規約や記録上の問題が起こることがあります。決められた取引経路の中で完了を確認しましょう。
修正版は変更点と差し替え対象を明確にする
修正が出たときは、指摘された箇所を直すだけでなく、どのファイルへ影響するかを確認します。一つの価格変更が、Web画像、PDF、編集用ファイルへ共通して必要になることがあります。修正一覧と納品物一覧を照らし、古い内容が残っていないか点検してください。
再納品では版番号を更新し、変更点を短く添えます。「価格を修正したので、掲載用三ファイルと確認PDFを差し替えてください。旧版は使用しないでください」のように、相手の作業が分かる案内にします。すべて送り直すのか、一部だけなのかも明記しましょう。
納品後に依頼者や別の制作者が編集した場合は、どの状態からの修正依頼なのかを確認します。自分が納めた版と、現在使われている版が違うことがあります。責任を決め付ける前に、ファイル、変更履歴、症状を集め、確認に必要な作業と費用を相談します。
保管と次回更新の条件まで整理して完了する
納品したデータをいつまで保管するか、再送の依頼へどこまで対応するかは、事前に決めておくと運用しやすくなります。無期限の無料保管を当然と考える依頼者もいれば、契約終了時に削除を求める依頼者もいます。守秘義務や保存に関する合意に合わせてください。
完成版、承認記録、納品物一覧、権利条件、請求に関する記録などは、必要な目的ごとに整理します。保管が必要な記録と、契約上返却・削除する素材が混ざらないようにします。バックアップがある場合の扱いも含め、不明な条件は依頼者へ確認してください。
デザインデータの納品は、ファイルを渡すだけでなく、受け取った人が適切な用途へ使えるようにする仕事です。用途、契約、形式、素材、点検、受領確認を順にそろえれば、不要なファイルを増やさず、次の担当者へも引き継ぎやすい納品セットを作れます。最初に一枚の納品物一覧を作り、その一覧を最後の確認まで使い続けましょう。


